ベトナムの送出機関を訪問

昨今、日本で働くベトナム人、特に技能実習生の数が増えています。日本で技能実習生として働きたいベトナム人はどのように募集され、どのような教育を経て、日本での実習先が決まるのか?そのあたりの実情について、ベトナム・ハノイにある現地送り出し機関の校長先生にお話を伺いました。

以下、月刊人材ビジネス誌2020年3月号で執筆した内容をダイジェストで記載します。

―――最初に、技能実習生の募集から内定までの流れを教えていただけますか?

当校では、ベトナム国内の提携高等学校において、技能実習制度に関する説明会(セミナー)を行っております。その説明会で技能実習生の希望者を募集しています。また、過去に当校で学んだ元技能実習生からの紹介も多いですね。

当校では、全ての応募者に対し、2週間の研修を無料で行っております。この無料研修では、基本的な日本語でのあいさつや、ビジネスマナーを教えています。最低限の日本語やマナーを習得した後、実習先の企業に紹介します。そして、内定が決まった学生のみ、正式入学となります。つまり、当校に入学できたということは、内定先も決まったということになります。内定先が決まっているわけですから、皆、モチベーションを高く保って勉学に励んでいます。

―――研修期間中、学生達はどのように過ごしているのですか?

多くの学生は、6ヶ月間、日本語を集中して学びます。授業は、1日6時間あり、放課後も寮で勉強しています。寮のテレビは、日本語教材の動画しか映らないようになっていますし、平日は原則外出禁止なので、生徒は皆、必死に勉強していますね。

日本語以外の部分では、日本で働いてから困らないように、日本の商習慣、マナーなどをきめ細かく指導するようにしております。当校は、他校と比べて少し規律が厳しいと思います。例えば、服装のルールなどは、かなり厳しいですね。厳しめに教育することで、日本での慣れない就労、生活にも耐えられるだけの精神力を養えるのではないかと思います。学生をお客様扱いして、日本に行ってから苦労するよりも、学生本人達のためにもあると思っています。

―――研修について、他に工夫されている点はありますか?

日本の商習慣やマナーを実例を示しながら教えるようにしています。例えば、ベトナムには、報連相の概念がほとんどありません。ですから、終業時間になってから、「本日完了すべきだった仕事がまだ終わっていません」と平気で言われることもあります。これでは、日本社会では通用しませんので、「報連相」とは何か、いつ、誰に対して、どのように行うのかを、全員に理解してもらうようにしております。

また、細かいことですが、日本式トイレの使い方にも慣れてもらいます。日本では、スリッパをはき替えるトイレもあります。ですから、本校内でも、あえてトイレ用のスリッパをはき替えるようにしている。

あと、学習のモチベーションアップのために、クラス毎、先生毎に、毎週の成績を掲示しています。これは、学生だけでなく、先生にとっても、奮起材料となっているようです。

―――学生に人気がある業種、職種は何ですか?

 製造業、縫製業など、工場系の仕事は人気がありますね。天候に左右されない仕事であるため、安定的に収入を得られるということで人気が高いです。工場系の仕事は、ライン作業(決められた工程を繰り返し担当するという単純作業)が多いため、仕事のスキルは身につきにくいのですが、安定した収入という点が魅力のようです。

 建設業、農業などは、天候に仕事が左右されるため、そのことを嫌う学生が一定数います。また、実習先によっては、乱暴な指導、叱責などがあり、そういう情報が元実習生から流れたりすると、なかなか希望者が増えないこともあります。ただ、給料が相応に高ければ話は別です。多少、仕事が過酷であっても、給与は全てに優先するという感があります。この点は、覚悟を決めて日本で働くつもりなのだなと感じます。

―――介護の仕事について、学生の興味や反応はいかがでしょうか?

ベトナムでは、祖父母は子供達や孫と一緒に暮らすことが多いです。ですから、介護という概念がないため、仕事内容をイメージしにくいようです。なぜ、そんな仕事があるのか理解するのが難しい様子です。イメージできない仕事には応募しないというのが現状です。この点についてはこれからの課題ですね。

―――日本での技能実習が終了し、ベトナムに帰国した後はどのような仕事をされる方が多いですか?

日本語を使う仕事に就く人が多いですね。ハノイ、ホーチミンをはじめ、ベトナム国内には多くの日系企業が進出しており、日系企業の工場も多いです。そうした企業で、日本語が話せると就職に有利ですね。

―――貴重なお話、ありがとうございました。

取材協力

NHAT THANH 留学及び高度人材開発株式会社

校長 金谷学氏

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